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呼吸と肺と心臓と私

~聴診器・肺モデル・リアル肺?~

 正直な話、私はあまり説明が上手くないので得意ではない授業です。おそらく生物分野のテストで最も正解率の低いところかと思います。理屈が分かれば間違えることもないと思うのですが、言葉が理解を邪魔する感じがします。なので、いつも通り実体験を重視した授業を!ということで毎回バージョンアップして大変なことになっています。

 まずはいきなりこの前と同じ聴診器を配ります。お医者さんごっこも2回目なので、だいぶ要領を得てきます。胸に当ててもらい大きく深呼吸。体(肺)の中に入っていく空気の音が聞ければいいなと思います。息を吸ったり吐いたりすることで肺が膨らんだりしぼんだりするという事はなんとなくわかってはいると思いますが、やはり体感させる事は大事だと思います。教科書での説明、簡単な板書の後、映像教材等があればそれを見て補足をします。見せる順番は映像が先のほうがよさそうです。時間に余裕があるときは、ペットボトルとストローとハート型風船でモデルを作り、横隔膜の動きも再現しながら肺の膨らみを確認をしていきます。正直な話なかなかいいものは作れると思いますが、なんだか工作すること自体が目的になってしまっている気がしたので最近はやっていません。

 それよりも私が生徒に見せているものは本物の肺。写真や動画にもアップしますが、この衝撃はおそらく一生忘れないであろうと思われます。いきなり実物だと、授業のポイントがずれてしまいますので、人体標本があればまずはその分解、肺静脈や肺動脈、肺胞の話をしながらテストに出そうなポイントを潰していきます。次に肺胞の話ですが、いまいち伝わりにくいので、資料集で見たことのある肺胞のレプリカ?シリコン標本を作ってみました。「これ欲しいなぁ」と思ったらまず作り方を調べて自分で作ってみるのが織笠流。6年前に初めてブタの肺で授業をやった後に作成しました。ホームセンターでコーキングガンと、シリコンシールを使って作ってみました。理屈は簡単で、肺の中の空気の通り道、つまり気管から気管支、さらにその先の肺胞へシリコンゴムを充填していくのです。枝分かれに次ぐ枝分かれで肺の表面積を広げ、毛細血管との接する面積を大きくするための構造をどうしても見せたいと思いました。教科書に載っている肺胞の形を見たときに、なんだかぶどうみたいと思ったのでそれも再現してみようと思ったのですが、さすがにこれは難しい。とは言え2人がかりでがんばって肺の中にひたすらシリコンゴムを注入します。隅から隅までシリコンゴムが入っていくと、なんだか風船のように軽かった肺がどっしりと重厚感のある臓器に変わりました。肺の立体的な形が崩れないように水の浮力をつかってゆっくりと固めます。

呼吸のまとめ.jpg
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 私はとりあえず熱湯でタンパク質を固めてから、水酸化ナトリウム水溶液に付けて脂肪とタンパク成分を崩し、塩酸につけてたんぱく質を分解し、酸素系漂白剤につけ臭いを軽減し、水酸化ナトリウムにつけ塩酸につけ漂白剤につける作業をひたすら繰り返していきます。腐敗臭とかがすると嫌なので、できるだけ早い段階で漂白剤に付けて殺菌消臭をするのが望ましいと思います。後は換気扇をきちんとつけっぱなしにして、臭いで困らないように他の先生に迷惑がかからないように配慮しましょう。

 最終的には薬品や酵素だけで全てを取り除く事はなかなか大変なので、直接手で肉を千切り取ったり、歯ブラシやピンセットなどを使いながら地道に肉片を落としていきます。この地道な作業も後々の美しい標本作成のためにとても重要になりますので、めちゃくちゃこだわって頑張って欲しいなと思います。

 

 大体1週間ぐらいあればまあまあのものが出来上がります。ただし根気と愛情が必要です。私は今回で3回目の作成になりましたが、正直やっつけ仕事になっていたので1番出来が良くないです。おごりと慢心がこのような結果を生んだので、やはり地道に写真を忘れずに作業したいと思います。生の肺の取り扱いですが、食肉公社にお願いして予約をしましょう。もし可能ならば気管付きのものを取り寄せています。喉仏のあたりからもらえると声帯の話もできるので、結構無理を言ってお願いしています。また心臓と肺の距離関係なども伝えたいので、大動脈の血管なども残してもらいながら、肺と心臓のセットを取り寄せています。ただこの仕入れについても最近はとても厳しくなっており、手に入りにくい状況が続いています。医学部や一部の検査機関にのみ許可しているようですので、うまくお問い合わせをしてください。

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